BtoB マーケティング手法としてのナーチャリング

「ナーチャリング」が日本で注目されるようになったのは、マーケティングオートメーションの導入を検討する企業が増え始めた2015年頃のことで、実はまだ5年くらいしか経っていません。

マーケティングオートメーションは2000年頃に生み出され、CRM や SFA と同様にアメリカで発展しました。日本では導入が遅れており、マーケティング力の弱さなどが指摘されていました。そこで、日本企業の間でもマーケティングオートメーションの有効性が認識されるようになり導入が広がってきました。それに伴い、マーケティング手法であるナーチャリングという言葉も知られるようになりました。

リードを選別して営業へ引き継ぐ重要なプロセス

マーケティングにおけるナーチャリング(Nurturing)とは、直訳すると「育成すること」です。「リードナーチャリング」と呼ばれることもあり、集客されたリードの興味・関心を高める各種施策がナーチャリングです。

ナーチャリングは、B to B マーケティングにおける「デマンドジェネレーション」の一つの要素です。デマンドジェネレーションとは、インバウンドマーケティングで案件を創出することを指しており、3つのプロセスから成り立っています。

1
リードジェネレーション

(集客)

2
リードナーチャリング

(育成)

3
リードクオリフィケーション

(選別)

リードナーチャリングは、リードを選別(営業への引き渡し)するための重要なプロセスになります。

インバウンドマーケティングとは?

インバウンドマーケティング(Inbound Marketing)とは、ブログや eBook、ホワイトペーパー、ニュースリリース、動画などのコンテンツを WEB で公開し、検索エンジンの結果ページに上位表示されたり、ソーシャルメディア(SNS)で共有・拡散されるような取り組みをすることで、見込み顧客に見つけてもらい、自社やその商品・サービスに興味を持ってもらえるように仕掛けるマーケティング手法です。
旧来のマーケティングは、企業から売りたい相手に向けて押し付けるアウトバウンド(外側に向かう)型で、テレマーケティングやダイレクトメール、マス広告などの手段が使われていました。しかし、デジタル時代の消費者・購買者は、情報過多の環境に置かれており、そうした押し付け型のマーケティングメッセージを避ける傾向があります。
これに対しインバウンドマーケティングは、消費者・購買者が WEB 検索や商業メディアの閲読、SNS での交流など、自分の興味・関心にもとづいて自発的に行動し、その結果、自分に役立つ情報として企業のマーケティングメッセージを受け取ります。そのため、売りたい相手が自らやってくる、そういう意味でインバウンド(内側に向かう)と呼ばれています。

日本市場では多くの企業がリードジェネレーション止まり

ナーチャリングは「お客さんを集める」と「お客さんに売る」の間に位置するプロセスで、ただ集客して売り込むのではなく、その間に情報を提供して顧客の興味・関心を高めることで成約率をアップさせる戦略です。そのことから、ナーチャリングは現在メジャーになっているインバウンドマーケティングの特徴を象徴するプロセスと言えます。

しかし、国内市場では「新規開拓」や「見込み顧客獲得」、つまりリードジェネレーションに注力する企業は多いものの、ナーチャリングの取り組みにまで至らないケースがまだ多いのが現状です。

なぜリードナーチャリングが注目されるのか?

アメリカ発祥のマーケティング手法がなぜ日本でも注目を浴びつつあるのでしょうか。その背景には2つの点があります。

  • 日本の市況の変化や購買プロセスの長期化
  • 休眠顧客の増加

日本の市況の変化や購買プロセスの長期化

リードの購買プロセスが変化した理由には次の3つがあります。

理由①:能動的な情報入手ができる環境になった

インターネットが普及するまでは、世の中の商品やサービス、新しい情報を取得する方法が限られていたため、「営業から説明を受け、商談後その場で発注した」というのが通常の営業スタイルでした。
しかし、現在ではインターネットが普及し、通信環境の改善やデバイスの多様化、SNSの普及やキュレーションサ―ビスの登場など、欲しい情報を取得したり共有したりする環境が整ってきました。それにより営業と商談をする前の情報収集期間が長くなり、購入・契約といった受注までの期間全体が長くなる傾向にあります。

キュレーションサービスとは?

キュレーションサービスとは、キュレーションによって情報をまとめ、共有するサービスの総称です。 「キュレーション(curation)」は、図書館などの施設の情報を収集し展示する管理職などを指す「キュレーター(curator)」に由来する言葉であり、ネット上にある数多くの情報を収集して特定のテーマに沿ってまとめたものによって新たな価値を生み出す、といった意味で用いられます。
代表的なものとして「キュレーションサイト」や「キュレーションメディア」といったものがあります。特にキュレーションサイトは一般的に「まとめサイト」とも呼ばれるように、ひとつのサイトにあらゆる情報が既にまとめられており、膨大なネット上から自分で地道に調べていくよりも効率よく必要な情報を得られるという点で、便利なサイトとして多くのユーザーに利用されています。

理由②:購買プロセスの厳格化

WEB上の情報量が飛躍的に増えたことにより、WEB サイトで情報を収集する行動が一般化したことと、市況の変化により購買行動が厳格化され、比較検討や稟議・決裁の重要性が高まってきたことがあります。特に規模が大きな企業であるほど稟議・決裁の手順が多く、その分購買プロセスは長期化します。

理由③:リード獲得方法の多様化

インターネットの普及でホワイトペーパーのダウンロードや製品比較サイト等、リード獲得をする手段も圧倒的に増加しました。同時に、直近では案件とならないような、確度が低いリードの数も増えてきました。
結果として、現在では獲得したリードのうち、営業活動をするに値しないリードの割合が75%にものぼると言われています。

ホワイトペーパーとは?

もともとは政府や公的機関による年次報告書つまり「白書」を意味しました。しかし近年ではマーケティング用語としても用いられており、特定の技術や商品について売り込む目的で、調査と関連付けて利点や長所をアピールする記載がなされることが特徴です。
マーケティングのホワイトペーパーでよくある内容として、市場環境や技術動向の分析、導入事例の解説、他社製品との比較などが挙げられます。見込み顧客の抱えている課題解決に役立つ情報を盛り込むことで、自社製品・サービスへの興味を喚起することができるとされています。顧客情報と引き換えにダウンロード・送付されることも多く、その場合は営業の足がかりとして、その後の関係構築に直接的につなげることができます。

休眠顧客の増加

休眠顧客とは、過去に見込み顧客リストに加わったものの営業案件に繋がらず、放置されているリードのことです。長年リードジェネレーションを実施してきた企業であれば、このようなリード情報も多く溜まっていると考えられます。

再度アプローチしたいものの、新規獲得も行っているので営業マンのリソースを割けない、割けたとしてもどこから当たればよいか見当も付かない、というような状況では、休眠顧客は年々増加する一方になってしまいます。

ナーチャリングが絶対必要なワケ

リードナーチャリングを行わなければ、様々な機会損失が生み出されます。先に述べたように、リードの購買プロセスは長期化・厳格化する傾向にあり、営業でフォローをしても直近で案件化できるリードは15%程度にすぎないと言われています。

しかし、そのフォロー出来なかったリードのうち8割は、2年以内に競合から製品・サービスを購入しているというデータもあるようです。これは大きな機会損失になっていると言わざるを得ません。

リードナーチャリングは休眠顧客から案件を創出できるという点でも非常に重要です。新しい見込み顧客を獲得するには、それなりの費用や工数がかかりますが、休眠顧客からニーズを創出できれば、休眠顧客を資産として活用できるからです。

また、リードのナーチャリングは「見込み顧客の育成」なので、ニーズがある程度顕在化し、見込み度合いが高まった顧客にのみアプローチできます。そうすることで「営業のリソースが割けない」、「どこからアプローチすれば良いのか分からない」という課題も解決でき、営業の効率化に貢献できます。

このように、リードジェネレーションと並行してリードナーチャリングを実施することが有効なマーケティング戦略になります。

ナーチャリングで3つの課題を解決

ナーチャリングは、以下に挙げる3つの課題を解決することができます。

課題①:顧客データが活用し切れていない
課題②:営業に引き渡すリードの質が低い
課題③:B to B ではリードタイムが長くなる
課題①:顧客データが活用し切れていない

名刺を集めてもマーケティングや営業でフォローできていないリード、つまり休眠顧客という資産が多いということです。せっかくセミナーを行っても、規模の大きな企業や脈のありそうな企業などを部分的に追うばかりで、その他はフォローせずに結果的に切り捨てているケースが多くあります。

こうした切り捨ててしまいがちな顧客にもメルマガやセミナー情報を伝えるなどしてナーチャリングできれば、思わぬところから成約につながるケースも出てきます。集客したリードを最大限活用するためにも、ナーチャリングプロセスを実践することが必要です。

課題②:営業に引き渡すリードの質が低い

ただ集客したリードの情報を営業に伝えてフォローしてもらおうとしても、営業はすべてのリードをカバーするだけのリソースを持ち合わせているわけではありません。興味・関心の低いリードを渡されても、営業としては見込みの低い営業活動を強いられるだけで、確実性のない非効率なものになってしまいます。

そこでナーチャリングを行うことにより、リードの興味・関心や商品知識を積み重ねて「質」を高めることができます。営業が電話なり対面なりでフォローを行う際には、すでにリード側に商品知識があるため、話がしやすいという利点があります。

また、リードナーチャリングを通じて見込み度合いが上がったお客様にのみアプローチするため、無駄なテレアポ、訪問、飛び込みなどが減り、営業の業務効率およびモチベーションの向上に寄与します。その結果、営業は、その時間をよりニーズの高いお客様への対応に費やすことができます。このような仕事が増え、無駄な業務が減ることは営業のモチベーションにも大きな影響を与えます。

課題③:B to B ではリードタイムが長くなる

リードタイムとは成約に至るまでの期間のことで、顧客は商品を手にとってすぐに購入してくれるわけではなく、よくメリット・デメリットを吟味して慎重に検討する B to B 事業では、この集客から成約までの期間が重要です。この間リードを放置するか、ナーチャリングを実施するかによって、リードに与えるインパクトは大きく異なってきます。

リードの購買プロセスが長期化していることから、現在では長期に渡ってリードをフォローし続ける必要があります。しかし、営業が継続的にフォローし続けるのには限界があり、決して効率的な施策とはいえません。

ここでリードナーチャリングを仕組みとして組み込んでしまえば、営業担当者の記憶や勘、長年の経験に頼ることなく、効率的にリードのフォローができます。

ナーチャリングの具体的な手法

ナーチャリングの手法として代表的なものを挙げます。

WEB 行動履歴のトラッキング

WEB 行動履歴のトラッキングとは、どの企業が WEB サイトへアクセスしてきたか、誰がメールを開封して WEB サイトへアクセスしてきたか、その後どのページを何回閲覧しているかなどの「足跡」を追いかけて記録することです。

近年は Google Analytics をはじめ、解析ツールがいくつも出てきています。それに伴って、オフラインの行動(展示会出席、名刺交換など)だけでなくオンラインの行動も情報として取得・蓄積できるようになりました。このデータを利用して、どういったメールをどのタイミングで配信するのかを検討することができます。WEB 行動履歴のトラッキングは、顧客情報の一つとして必ず取得しておきたいデータです。

メール

メールによるマーケティングとしては、「メルマガ」「ステップメール」「セグメントメール」といったものがあります。

メールマーケティングを実施している企業は多くありますが、配信時間帯やタイトル・本文、配信頻度などを調整することが必要です。時間帯によって、開封率やクリック率が大きく変化する場合があります。手軽に情報を得られるメルマガは有力なナーチャリングツールと言えます。

ステップメールは、見込み顧客に対して段階的にメールを配信する手法のことです。例えば、特定の商品に興味を持っていると想定される見込み顧客だけに、その商品についての知識や使い方などを日替わりで送るといった使い方があります。メール配信ツールによってはステップメールの設定が可能です。一つ目のメールの翌日に二つ目、三つ目……と連続で配信する設定が自動でできるようになっています。メール配信の業務効率や効果を上げるためにも、ステップメールの頻度や設定、ツールの選定などを積極的に利用することも有効です。

セグメントメールは、特定の属性の人だけに絞ってメールを配信する手法です。例えば、以前送ったメールに貼った商品の URL をクリックした人だけに、その商品のキャンペーンメールを送るといったものです。

SNS

SNS マーケティングは最近特に見逃せない手法となってきています。SNS は生活と密接に関わっているためユーザーと接触しやすいことから、見込み顧客とつながるのにハードルが低いこと、メールアドレスを入力することもなく他のユーザーに対して拡散力があるのも特徴です。様々なメディアが存在するため自社に合ったものを選択する必要があります。

SNS は B to C のみ有効かと思われがちですが、実は B to B に対しても有効なリードナーチャリングの手法です。SNS を使うことで認知度の向上やブランディング、ロイヤリティの向上が期待できます。

オウンドメディア

オウンドメディアとは、自社で運営するブログのようなものです。オウンドメディアで役に立つ情報を発信することで、企業の認知度やロイヤリティの向上ができます。

オウンドメディアを作るには、SEO の知識や WEB マーケティングの知識が必要です。そのため短期的に効果が出るものではありませんが、軌道に乗ればリードナーチャリングの手法としてだけでなく、リードの獲得もできます。

セミナー/ウェビナー

セミナー/ウェビナーは、例えばメルマガ配信対象者のみなどクローズされた場で設定されることが一般的です。特に、地域を選ばない「ウェビナー(WEB 上でセミナーを行い動画配信する)」は日本でも最近普及してきています。

セミナーやウェビナーは、オウンドメディアや SNS を使った手法と比較して、対面でのコミュニケーションに特化しているという特徴があり、商品やサービスもさることながら担当者への信頼を醸成するのに効果的なツールです。実際に対面することにより、やはり文字情報よりも、実際の顔や声に接した方が安心できる側面があります。そうした意味で、セミナーやウェビナーへの出席を促すことはナーチャリング効果も高いと考えられます。

メールや SNS、オウンドメディアとも組み合わせが可能なので、リードナーチャリングをする上では取り入れたい手法です。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、メールアドレスの取得だけでなくナーチャリングとしても効果があります。ホームページに載せていない裏情報をこっそりメールに添付するなどして提供することで、リードに「特別感」を与えることにもつながります。ホワイトペーパーの内容次第では、そのまま商談・成約につなげることも可能になります。

ナーチャリングの手法をいくつかご紹介しましたが、もちろん商品やサービスの性質によっては、サンプル製品やお試しサービスの提供などといった他の手法もあります。ポイントは、あくまで「リードの興味・関心を引き出すこと」にあります。何がリードに響くナーチャリング手法なのかをよく検討して実施することが重要です。

ナーチャリングに欠かせない「マーケティングオートメーション」

ナーチャリングには WEB 行動履歴のトラッキングやリード情報の管理・分析はとても重要ですが、手動や無料ツールではどうしてもできる範囲に限りがあります。

そこで近年注目を集めているのが、マーケティングオートメーションです。「オートメーション」という言葉の通り、WEB 行動履歴を自動的に取得して蓄積し、メルマガやセミナーの効果を分析してレポートに出力し、一定程度育成された質のよいリードを営業に渡すところまで、一連の流れをワンストップで行うことができます。これによりナーチャリングキャンペーンの PDCA サイクルを効率的に回すことができ、マーケティング戦略の改善と向上をするにはとても効果的です。

WEB 時代の B to B マーケティングにおいて、マーケティングオートメーションはますます不可欠なものとなっていくことが予想されます。

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